事業承継

事業承継の課題と現状

中小企業・小規模事業者は雇用の担い手、日本経済の縁の下の力持ちとして、日本社会において非常に重要な役割を果たしておりますが、近年では経営者の高齢化などから、事業承継の必要性が高まってきています。 そして、中小企業庁の報告によると、2025年には団塊の世代の方々は全員が75歳以上となるなど、経営者の高齢化は今後ますます加速していくことから、事業承継はいよいよ待ったなしの状況となります。

ところが、60代、70代の中小企業経営者のうち、約40%~50%は未だ後継者が不在の状態とも言われており、実際に、近年では、事業承継を行うことができずに、廃業をせざるを得ない状況に陥ってしまう中小企業・小規模事業者も多くみられます。

廃業をする中小企業・小規模事業者の約6割は黒字にもかかわらず廃業をしているとの調査結果も存在するところ、黒字企業が事業承継を行うことなく廃業してしまうことは、経営者本人にとっても、企業の従業員や取引先等の関係者にとっても、日本経済・社会にとっても、大きな損失となります。

事業承継を行えずに、廃業に陥ってしまう中小企業・小規模事業者の多くは、後継者が見つからなかった、承継の方法がわからなかった、などの悩みを抱えていたとの調査結果も出ており、今後の専門企業・専門家による中小企業・小規模事業者に対する事業承継の支援の強化が求められております。

当事務所は、適切な後継者探しや選定のお手伝い・事業承継手続の始め方から完了まで、ファイナンスアドバイザリーや税理士等の専門家と連携をしながら、ワンストップで、中小企業・小規模事業者のご依頼者様の事業承継に関するお悩みを解決いたします。

事業承継とは?

事業承継とは、現経営者(オーナー)が、会社を後継者に受け継がせることをいいます。会社を後継者に受け継がせるには、「事業経営の承継((自社株式などの承継))」と「事業財産の承継(会社に貸している資産や負債などの承継)」を行う必要がありますが、本ページでは、主に「事業経営の承継」について説明します。

事業承継の方法について

事業承継という言葉を聞くと、「子どもに継がせる」方法のみを思い浮かべる方が多いと思われますが、実際には、子どもに継がせる方法を含め、以下の3つの承継方法があります。

1.親族への承継(親族内承継)

経営者の子供などの親族に事業を承継させる方法を、親族内承継といいます。
親族内承継は、現在の日本において最も多く用いられていると言われている方法です。
相続・贈与・売買などの方法により株式を承継します。

親族内承継の最も大きなメリットは、後継者の育成・引継ぎを早期・計画的に進めやすいという点が挙げられ、他にも、従業員や取引先などの支援や理解が得られやすい点や生前贈与や相続による株式移動が可能な点もメリットと言えます。

逆に、親族を後継者として育成するには、一定の時間・経験を要すること、相続人が複数人いる場合には相続人間の調整が必要となること、経営者の個人保証の引継ぎの問題について検討・対策が必要となることなどはデメリットとなると言えます。

2.従業員への承継(親族外承継・MBO)

取締役などの経営陣や従業員に事業を承継させる方法を、親族外承継と言い、「MBO」(Management Buy-Out)と呼ばれることも多い承継方法です。
MBOは会社内の役員や従業員へ承継するケース(内部昇格)と、主要取引先や金融機関などの外部から後継者を招聘して承継するケース(外部招聘)があります。

親族外承継のメリットとしては、内部昇格の場合には、経営の一体性を確保しながら承継ができることが挙げられ、外部招聘の場合には、経営刷新による事業拡大のチャンスが見込めることが挙げられます。いずれにしても親族外に広く後継者候補を求めることができることや、後継者育成の時間が不要で後継者が見つかり次第速やかに手続きに移ることのできる可能性があることがメリットと言えます。

一方で、後継者となる者には株式取得等のために一定の資金が必要となることや、経営者が負っていた連帯保証債務についての処理が問題となることが多いことはデメリットと言えます。

3.M&A

第三者の企業に株式や事業を売却する承継方法を、M&Aといいます。近年では、M&Aによる事業承継の数が増加傾向にあります。

M&Aのメリットとしては、社内や親族に適切な候補者がいない場合であっても、購入を希望する会社が見つかれば、事業や従業員の雇用を継続しながら、すぐにでも承継をすることができる可能性があることが挙げられます。 また、早期に事業承継が実現するだけでなく、株式・事業の売却代金が入ってくるので、これを退職金代わりとすることができることや経営者個人が負っていた連帯保証も解除されることも大きなメリットと言えます。

一方で、M&Aは、完全な別会社への承継となりますので、経営者が積み上げてきた理念や社風が引き継がれなかったり、取引先との関係に影響が生じる可能性もあることはデメリットと言えます。

事業承継を見据えた早めの準備・相談のすすめ

上記のように事業承継の方法にはいくつか種類があり、各方法によって多くの違いがありますが、いずれの手続きも、多くの関係者が関与する、会社全体に影響を及ぼす一大事となりますので、経営者が事業承継をしようといざ決断してからも、実際に事業承継の手続きが完了するまでには、一定の時間を要し、煩雑な手続きを要します。

また、事業承継の手続きにおいては、大小問わずアクシデントが起きることも多く、想定よりも時間や想定外の対応を要することがあります(例えば、経営者としては、自分の息子に事業を引き継いでもらうつもりであったところ、いざ承継しようとしたタイミングで、息子から承継を断られ、後継者を一から探す必要が生じることもよくあります)。

このようなアクシデントに備えるためには、事前に時間をかけて、会社の状況を把握し、後継者候補などの関係者との意思疎通を重ねながら、準備を進める必要があります。

当事務所は、中小企業・小規模事業者の皆様の事業承継支援に注力をしており、適切な後継者探しや選定のお手伝い・事業承継手続の始め方から完了まで、ファイナンスアドバイザリーや税理士等の専門家と連携をしながら、ワンストップで、中小企業・小規模事業者のご依頼者様の事業承継に関するお悩みを解決いたします。

既に事業承継に関するお悩みをお持ちの場合だけでなく、将来の事業承継のためにどのような準備をしていくべきかお悩みの場合には、事業承継の継続相談や法律顧問という形でサポートさせていただくことも可能ですので、お気軽に当事務所までお問い合わせ下さい。

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